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「いや、それがさ・・・」 そう言って語り部は友也くんに移る。 それは、友也くんの同期の男の子が体験した話だった。 「そいつ、一人暮らしなんだけどさ、たまたま友達が家に遊びに来たんだって。久しぶりに会ったから話も弾んで、割と遅い時間まで宅飲みをしててさ。そんなこんなしてたら終電の時間も過ぎちゃって、まあ今日は泊まってけよって流れになったらしいんだけどさ。友達は床にタオルケット敷いて寝て、そいつはベッドで寝ることになったんだ」 私は心の中でなんとなくオチが読めてしまった、と落胆した。 それはネットに転がっている怖い話の中でもそこそこ有名なものとほぼ同じ内容だった。 そこからしばらくすると、友達が急に「ちょっと外に出よう」と誘うのだ。 訝しみながらも従うと、外に出た途端に友達が語りだす。 「ベッドの下に知らない人がいた」と。 尚も友也くんは語り続けるが、話のオチは私が考えたものと同じだった。 その友達曰く、ベッドの下の怪しげな男はじっとこちらを見ていた、と。 この話はここからいくつか派生があるが、ざっくり分けると「その男がこの世の者であるかどうか」に焦点が当たる。 男=霊説の場合は後日談としてその部屋で昔殺人や自殺があった等々のエピソードが入り、逆に男=生身の人間説の場合は知り合いの霊能力者にお祓いを頼む場合が多い。 その結果、霊能力者が「この部屋には霊障のようなものは感じられない」と語り、結果的に男が霊でない=生身の人間である、という裏付けになる。どちらかといえばこのパターンがメジャーかもしれない。 何にせよ、一人暮らしの普段生活している部屋に潜む怪談話としては割と多く語られる類のものだ。他にはシャワーを浴びている時に後ろに立つ人とか、ストーカーの気配を感じて監視カメラを設置したら、男が自分の部屋のクローゼットに隠れ、そこでカメラが止まる(すなわち今もなおクローゼットの中にいる)といった"ネタ"も有名だ。
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