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フルーツパフェ
朝早くに学校に来て、ホームルームが始まるまで校内にある園芸部の花壇に水をやるのが、僕、ーー夏 瑞貴ーーの日課。
他のやつにもやらせればいい。そう、友達は言うけれど、花屋の息子である僕には、花の世話という日課が苦ではなく、逆に、こうやって日々成長していく花たちを見るのが楽しみでもある。
サーと音を立て、ホースから勢いよく広がる水を見ていたが、突然、蛇口も締めてもいないのに、勢いよくでていた水が止まり、ホースの先を目で追うと、足が見え、今度はその足を追うように顔を上げていくと見知った相手にため息を吐く。
「ゆーちゃん……邪魔しないでよ……足どけてくれない? 水やりできないとホームルームに遅れるんだから」
「お? どけてもいいのか?」
口角を上げたゆーちゃんに、僕はハッとする。
ホースの先を見れば、その先は僕の方を見ていて咄嗟の行動ができるわけもなく、目を閉じると、冷たいと騒いだのはゆーちゃんの方だった。
かけられるはずだった僕はというと……
「お前のやる事はいつも小学生レベルだな優高」
「は、はーちゃん……お、おはよう」
僕を水の危険から救ってくれたのは、真面目を絵に書いたような男で生徒会長の三笠 白皇。
そして、僕に意地悪をしてくる両耳にこれでもかっていう程のピアスを付け、目付きが悪いヤンキー君は、田間 優高。
最後に、地味で花達が友達の僕は、夏 瑞貴。
傍から見れば、相容れない三人に見えるけど、僕達は、小学校からの幼馴染で、地味で言い返すこともできない僕を見かねて、二人は僕と同じ道を進むとまで言い出して今に至るという感じです。
「朝早くまで来て土いじりの何が楽しいのか……」
腰を下ろしたゆーちゃんが雑草を引き抜き、用意してあったゴミ袋に雑草を投げ込み、はーちゃんは軍手をはめ、僕が渡したスプレーボトルで、葉っぱに直接水を吹きかける。
「……ごめん……二人共自分たちの事があるんだから手伝わなくてもいいよ?」
「はぁ? 俺達の最優先は瑞貴しかいねーから」
いつも喧嘩してる二人なのに、声がシンクロしてて、その後で言った「真似するな」も合わさったのだから、顔を合わせて二人が横を向いたのも同時。
とてもじゃないけど笑わずにはいられなくて、声を上げて笑い出すと、笑うなと言ったのも同時だった。
「ま、いいけどよ……白皇、肩に毛虫が乗ってるけど大丈夫か?」
「な、なに!」
虫が嫌いなはーちゃんが、ゆーちゃんから言われたことで、全身が固まってしまったけど、僕からは虫を確認することができなくて、どうしようか戸惑う僕の方をゆーちゃんが抱く。
「お! もうすぐ始業ベルが鳴るな、さっさと教室に行こうぜ瑞貴」
ゆーちゃん……凄く棒読み……
僕達の名前を叫ぶはーちゃんの声を背中で感じながら、僕とゆーちゃんは校舎に戻るのだった。
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