小豆と抹茶パフェ

1/2
前へ
/8ページ
次へ

小豆と抹茶パフェ

 國東組。  古くから一体を仕切る極道で、俺はそこの若頭代理を務める國東龍哉。  頭は父親でもなければ誰かの下に付いてるわけでもない……義理人情の熱いじいちゃんに感銘を受けた俺が、両親の反対を押し切り、大学卒業とともにじいちゃんに土下座をし、一門に入れてもらえたのだが、おかんに何かを言われたのか、じいちゃんから盃を交わされたこともなければ、彫りモンも許してはくれない。  若頭代理と言っても、任される仕事は大量で、ガキの登下校を見守り、週一で神社のお祭、経営しているホストとホステスの管理。  目まぐるしいほどだが、高校の時からの親友、南部恵介が、補佐に就いてくれているから、楽に事を進めている。  仕事を終えた俺が事務所に戻ると、組の事務所だとは思えない、女性の黄色い声が聞こえ、何事かと車を止めた恵介を見た。 「なんや……誰かおるんか?」 「あのアホ……くんのがはえーんだよ」  メガネにスーツ、絵に描いたようなインテリヤクザの恵介が文句を言いながら、車を降りた恵介が、後部座席のドアを開ける。 「客人か?」 「そんなとこやな」  螺旋階段を上がり、事務所のドアを開けた俺が見た光景は、ヤクザの事務所とは違い、どこかのフォトスタジオの様にシャッター音を響かせていた。  呆然としている組員達の間を割って入った恵介が中央に立ち怒号をきかせる。 「撮影会は終わりや! お前らもデレデレせんと極道の事務所らしくしゃきっとせぇ! ボサッとせんと並ばんかい! 若のお帰りや!」  はい!と声を上げた組員は、恵介の怒号で二手に分かれ、頭を下げるのだが、このお迎え方が苦手な俺は、肩を落とし、ため息を吐く。 「恵介、客人って誰や」 「僕です〜」  恵介の後ろから顔を出した男は、お久しぶりと右手をひらひらと振りながら、俺の前に立つ。  俺もそこそこの長身だが、男も俺と変わらない身長で、スラリとしたモデル体型、そして、ニコっと笑った笑顔にある人物が重なる。 「……誰や?」  俺の言葉に事務所の空気が凍りつき、一泊置いた後に、組員からのため息と、呆れ顔の恵介に言葉が詰まった。  忘れてるわけではない。  西澤瞬、高校の時のクラスメイトだ……俺や恵介とは種類の違う人間で、社交的で友達も多く、勿論、このナリだから、休憩にはいつも女に囲まれていた彼から、俺は目が離せなかったのだから…… 「高校のクラスメイトで西澤瞬や……テレビを見やんと経済雑誌見とるお前にはわからんやろうな……西澤は今話題の俳優さんや」  俳優と恵介から紹介された西澤は、笑顔で何度も頷き、俺の手を握ってきた。 「今度映画で極道の役を任されてん……よりリアルに再現したいさかい……一ヶ月、國東の横に居さしてくれへん?」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加