レンタル実家

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「それは凄いですね。このメダカは自動餌やり機で、朝と午後に餌をあげています。どうぞ、こちらがリビングです」  今では珍しい昭和型板硝子がはまったドアで、実家のものとよく似ている。星模様が可愛らしい。 「石油ストーブもあるんですね」 「はい。実際にはご使用出来ませんが、レンタル実家、雪国モデルとして設置する事になりました」  リビングにはソファーとローテーブル、それと壁際に置かれたアップライトピアノが存在感を放っていた。ダイニングには食卓テーブルと四人がけの椅子が置いてある。 「宮原様、早速ですが話をお伺いしても宜しいですか?」  菊池はカバンからファイルを取り出して、膝の上に乗せた。 「モニター応募の事前アンケートでは、レンタル実家に泊まれたら『ご飯を作って食べる』とございますね。お母様の料理を再現したいとか」 「そんな大層な話じゃないんです。一人暮らしをして長いんですけど、食生活をおろそかにしていたら体調を崩してしまって。お恥ずかしい話ですけど、実家に住んでいた時は母に全部やって貰っていたんだと反省しまして。母と同じように料理をしてみたいなって思ったんです」
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