心機一転

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心機一転

「空が高いな」 「おはようございます」か「こんにちは」どちらの挨拶をするべきか微妙な時間に、一見すると出張帰りとも思える姿でそう呟く。 ついこないだまで暑かったはずなのに、道行く人達の中に薄手のコートを見かけるようになった。無心で仕事をしている間に、季節が変わろうとしていたらしい。 空を見上げるなんて久しぶり。 青々と澄んだ空が、気持ちを少しだけ軽くしてくれたような気がした。 大丈夫、一人でもやっていける。 大丈夫、一人でも寂しくない。 大丈夫、大丈夫。 大きめのスーツケースの上にキャリーオンバックを乗せ、ゴロゴロ、カツカツと音を鳴らしながら駅前を歩いていく。 休日なのにスーツを着て来たのは、これが私の戦闘服だから。メイクは武装。必殺技もあれば良かったのだけど、残念ながらそんなものはなかった。
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