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玄河の告白を聞いた勇理は、ピタリと動きを止めてしまった。半開きの口や驚き見開いた目もそのままに、瞬きすらしない。
「勇理くん?」
玄河はカウンターからのぞき込むように顔を出し、勇理に話しかけた。
壊れたロボットのように固まっていた勇理は、上体をビクリと跳ねさせ、忘れていた瞬きを取り戻すみたいに一度強く目を瞑ってから、何度も瞬きを繰り返している。
「すみません。どういった意味なのか考え込んでしまいまして」
勇理はグラスの中にたっぷり残っていたオーリアンを一気に飲み干したものの、やはり甘すぎたのかまたしても目をしばしばさせている。
「マスターのおっしゃっている死というのは、精神的な意味においてのそれではなく、物理的な死――つまり生命活動が停止したものと捉えていいのでしょうか」
「それに関しては、わからないとしか答えようがないんだよ。自分が死んでいるかどうか判断がつく段階では死んではいないだろうからね。少なくとも私は、しばらく意識のない状態だったんだろうと思う。死んだと判断されるくらいには」
わかったようなわからないような顔で頷いてから、勇理は残っていたカレーを掬い口に運んだ。
「村落で祭りというか、儀式があってね。その席に呪術師が呼ばれていたから私も同席させてもらったんだ。儀式が終わると宴が始まったんだが、しばらくしたところで急に意識が朦朧とし始めた。呪術師が私に何か言ったのは覚えている。だが、そこでプッツリと記憶が途絶え、目を醒ましたら真っ暗な棺桶の中にいたってわけさ」
「……マスターは生きたまま埋められたということなのですか」
勇理はスプーンを握ったまま、大きく目を見開いた。
「君がさっき言っていた吸血鬼の話と同じだよ。仮死状態だった我々は、死んだと思われて埋葬されたんだろう」
仮死状態だったと聞いて、勇理は僅かに安堵の表情を浮かべたように見えた。大のオカルト好きだと言っても、自分の叔父がよみがえった死者だというのは、受け入れがたいものらしい。
しかし彼は何かに気づいたのか、急に前のめりになった。
「え、マスター。我々ということは、呪術師も亡くなったとみなされたんですか」
「ああ、おそらく呪術師のために用意した食事に毒物が入っていたんだろう。彼らは呪術師を殺すつもりだった。私に関しては予定外だったんだろうがね」
「随分物騒な話ですね。計画的に殺すつもりだったから、ふたりが倒れた時点で十分な確認もせずに死んだと決めつけたということでしょうか」
「そうかもしれないね」
「いったいなぜ彼らは呪術師を殺そうとしたのですか」
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