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「麻薬ですか……。それにしても、カンボジアが火葬じゃなくて良かったですね。僕はカンボジアもタイのように火葬なのかと思っていました」
「ああ、それはたしかに幸運だったね。カンボジアも上座部仏教の信者が多数を占めるからほぼ火葬なんだが、私の滞在していた集落は数少ないイスラム教の部族が住んでいたから、土葬だったんだよ」
さらりと言う玄河に、勇理は目を丸くしている。
「それは、本当に命拾いをしたという感じですね。呪術師はそのあとどうなったのですか。命を狙われたままだったのでしょうか」
「いや……、彼は死んだんだよ。予言通りにね」
少し言い淀んでから、玄河は視線を手元に落として言った。
「……マスターだけが、命を取り留めたということですか」
「私の嗅いだ香に仮死状態にするような効果があったとすればだが、彼もある時点までは生きていたんじゃないかとは思う」
「呪術師はマスターのようには棺から出られなかったということでしょうか」
玄河はいいやと左右に頭を振ってから、勇理の瞳をしっかりと捉えて口を開いた。
「不可能だったんだよ。棺から絶対に出ることができないように、彼らは呪術師の頭部を切り落として埋葬したからね」
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