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「マスターすみません。申し訳ないですが、もう一枚取り皿をいただけますか。できたら平たいものを」
長方形のプレート皿が前に置かれると、勇理はボウルの中から取り出したナッツとドライフルーツを、標本のように一種類ずつ等間隔に並べはじめた。
「僕はこれだけでいいので、あとは流星に差しあげますよ」
並べ終えてから微調整し、満足そうに眺めてから、彼は摘まんだ杏子のドライフルーツをで齧った。
「ずいぶん風味のいいドライフルーツですね。今度の店では、ナッツやドライフルーツも扱うようになったんですか」
「いや。これは、307号室に住むロシア人の青年からのもらいものなんだよ」
「307号室……?」
勇理は斜め上に視線を向け、何か思い出そうとしているようだ。
「ああ、西の階段横の部屋に、日本人男性とふたりで住んでいる方ですか」
「部屋の前でキスしまくっていた奴らな。盛り上がりすぎて、勇理が動揺して双眼鏡を落としかけたんだよな」
ニヤニヤする流星に、「あれはに手が滑っただけですよ」と言い訳した勇理だが、しっかり思い出してしまったのか顔が赤くなってしまっている。
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