猫が歩いた道に落ちている幸せ

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「そうだけど」  痛いところを突かれる。  家でゲームばっかりやってるから、体がなまりまくっているのは事実だ。  広場に移動し、久しぶりにラケットを握った。 「行くよ!」  犬上さんのかけ声がした刹那、強烈な球が飛んできた。あのころとは比べものにならない速さ。僕は食いつくので精一杯だった。どうにか打ち返すも日ごろの運動不足も祟って、もう息があがりそうになる。 「うわっ。手加減してくれよ」  思わず弱音を吐く僕。 「だーめ」  犬上さんは楽しげに笑う。  僕は必死になってボールを追うが、結局いいように遊ばれ、負けてしまった。けれども、不思議と嫌な気分じゃない。むしろ、幸せだった。  地べたに座り、肩で息をしていると、犬上さんが近寄ってきて、となりに腰をおろした。 「噂は本当だったんだね」 「うん?」 「猫の足あとだよ。わたしは今、とっても幸せだよ」  犬上さんはプラスチックの水筒に入ったレモン水を飲むと、照れたような笑みを浮かべた。
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