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本棚に追加3.真夜中になぜ?
彼がいつどこで何をしているのか、深く考えないようにしようと思ってきた。だけど、気づいてしまったものは仕方がない。
ある夜に、薫がこっそり出かけて行く音を僕は聞いてしまったのだ。
その日は夕方から雨が降ってきて、僕は晩御飯も食べられずベッドに入った。
そのままいつもよりかなり早く寝てしまい、夜中に目を覚ました。
「水飲もう……」
喉が渇いたので、キッチンに行こうとした。すると玄関のドアがガチャリと閉まる音がした。
(え――? 薫、こんな時間に外出?)
時刻は0時を回ったところだった。
暗くなってから用事があると言って出掛けて行き、深夜に帰ってくることはこれまでもあった。
薫が僕に内緒にしていることが何一つ無いとは思っていない。僕たちの生活費は父から十分に与えられている。しかし、薫がそれをどう運用しているかなんて僕は知らない。
薫は僕のことが好きだと実家にいる時から言ってくれていた。僕はそれを疑問にも思わず、当たり前のように思っていた。
(だけど僕は薫のことを実はよく知らないんだ――……)
なんとなく、問い詰めれば薫と一緒にいられなくなってしまう気がしていた。僕は考えるのをやめ、水を飲んでまたベッドに横になった。
◇◇◇
翌朝目を覚ますと隣には薫がいた。
(よかった。帰ってきたんだ)
しかしいつもなら自分より早く起きて朝食の支度をしているのに、と僕は訝しんだ。
「薫?」
声を掛けると彼が目を開けた。
「おはよう、唯斗。こっちに来て」
彼はそう言って僕を抱きしめた。そして、珍しく首筋や胸元に顔を擦り付けるようにしてふざけている。
「どうしたの? 薫。くすぐったいよ」
「唯斗は良い匂いだな。舐めて良い?」
「え? 何、朝から……」
「今日はいい天気だよ。体調もいいだろ? 溜めすぎは身体に悪いからね」
彼は笑みを浮かべて布団の中に潜り込んだ。下着を下ろされ、彼が僕のものを口に含む感触に身を震わせる。
「んっ……ぅ」
(なんで――急に……)
「あんっ、だめ……」
布団の中からくぐもった水音がする。僕は寝起きにもかかわらず、強すぎる刺激を受けて腰をくねらせた。
「いいっ、あ……んっ」
(気持ちいい……)
普段は無表情で何を考えているのかわからないような薫だが、その口の中は想像以上に熱かった。執拗に舐められ、先端を吸われて身体が跳ねる。
程なくして僕が彼の口の中に精を吐き出すと、彼はそれを躊躇いなく飲み込んだ。
「美味しかった。ありがとう」
「飲んだの? やめてよ、恥ずかしいのに……」
「口をすすいでくるよ」
(まただ――)
薫は口でするのが好きなのだそうだ。いつも僕ばかりイかされて、彼の身体には触らせてくれない。
「唯斗が気持ち良くなるのを見るのが俺の楽しみなんだ」と彼は言う。
(こういうのって、お互い気持ち良くならないと意味ないんじゃないの?)
薫の他に恋人がいたことのない僕にはよくわからない。だけど、僕らの関係が普通じゃないことには気付いていた。
まだ十代だった頃は、僕の年齢を気にしているのだと思っていた。だけど、僕が成人した後も彼とちゃんと最後までしたことはなかった。それが僕を不安にさせていた。
(恋人同士だと思ってるのは僕だけなの――? もしかして、薫には他に好きな人がいるんじゃ……)
今は実家を出て二人暮らしをしている。そして、薫は定職に就いていない。もし僕と別れれば……?
(まさか、夜中に誰かと会ってる――?)
彼は僕の面倒を見る代わりに何不自由なく暮らせるだけのお金を手にしている。
そのために僕の恋人の振りをしているのだろうか。
本当は僕のことなんて好きでもなんでもなくて、セックスなんてしたくないのかもしれない。
(いや――そんなわけない。だったら僕の出した物、飲むわけないし……)
僕は答えの出ない疑問でこれ以上頭を悩ませたくなかった。ベッドを出てシャワーを浴びることにした。

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