レンタルワールド

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どんな人だって、一人で生きてる訳じゃない。 誰だって会社とか街とか、なんなら国とか。 いろんなコミュニティに参加して初めて生存を認められて、自分が生きるためのスペースを貸し出されてる。 俺だけの為にある、俺だけの空間。 まあ、本来そのスペースは誰の物でもない地球の一部であって。 地球にしてみれば『勝手に住み着いた人間が勝手に俺を区切って権利を主張してやがる』なんて文句の一つも言いたいかもしれないな。 地球様よ。 悪いけど、この170センチ程の人間が一匹、我が儘に暮らして行く為のスペースを、もうしばらく貸しておいてくれ。 天涯孤独、の天涯とは空の果ての事。 こんな俺にも朝が来れば、青空は広がっている。 ガラじゃないけど、しゃーない頑張るかって気分になれるんだ。何かいいことが起こりそうな気分に。 いつか本当に俺が空の果てへ飛んで行く時には、きっと地球様にお返しするから。 ……なんて事を思いながら、スマホの画面を眺めている。 人付き合いが苦手な俺が唯一率先して参加しているコミュニティはスマホの中の世界かもしれない。 自分で発信はしなくても、アカウントを作れば生存を認められ、スマホの中に広がる情報の小宇宙に触れる事が出来る。 それを眺めて奪われる時間は有意義とは言い難いが、分かっていても眺めてしまう。 携帯電話が普及する前は、話し相手がいなければみんな退屈しのぎに新聞や雑誌を読んだり、人間観察をしたりしていたのだから、暇になると人はとにかく外部からの情報を得たくなるのかもしれない。脳みそはきっと寂しがり屋なんだろう。
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