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 人の生活感に  ごった煮にされているのがひどく心地いい  管理人のヒロにはよく手作りのベーグルをもらったりする。  最近、小型犬がもう一匹増えたらしい。コウタロウという白い王子様みたいなトイプードルでは飽きたりなかったのか。  つまりは、新しい子ども(♂)を家に連れ込んだらしい。いや、少し言い方が悪かったか。好意で家に拾ってきたと言った方が正しいか。  世田谷にあるレトロな趣あるマンションの一室。壁面には蔦が幾重にも絡まっていて、どこか退廃的にも見える。  それをこいつは素敵だという。俺には難しくてわからないが、このマンションがいいものなのは確かだ。  ときどき、こいつはどんな感性を持っているのか気になることがある。見た目からは、雑そうな奴なのに。変なところだけは繊細だ。お互いに長く付き合っていればそういうところを見ることが増える。雄馬の弱いところ、強いところ、実は悲しいところ、嬉しいところ。全てをわかりたいと思う。わかってやりたいと思う。  それは俺がこいつの恋人だからか。こいつのことなら、なんでも知っておきたい。  こいつが毎朝1階のポストに郵便物を取りに行くときに挨拶する勇老人との会話ですら。1音たりとも聞き逃したくない。  仕事終わりに家のチャイムを鳴らして焼きたてのパウンドケーキを持ってくる管理人のヒロが雄馬にそれを手渡すときでさえ。触れられたくない。故意でなくても、触れさせたくない。  そんな独占欲は日々増すばかりで。
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