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傲慢のエグモント
アータ王国の国王、エグモントが横暴なのは今に始まったことではなかった。
幼い頃から一人息子として両親に散々甘やかされて育った上、大の勉強嫌いなので政治の知識はほとんど見につかず。結果、大人になったあとは両親の死去と同時に国王の座についたものの、職務は全て家臣らにまかせっきり。自分は日がな一日、自分の部屋でゲームと漫画ばかりといった状況だった。
散歩に出ることも嫌なので、運動不足になってぶくぶくと肥え太り、しまいには立ち上がることも億劫になるほどである。
それでも、エグモントの両親に恩があり、アータ王国に絶対の忠誠を誓った部下達は逆らえない。執政官のコートも、その一人だった。
――確かに、今はご両親も亡くなられ、環境も変わったばかり。エグモント様もきっと混乱されているに違いない。
コートは現実逃避気味にそう思った。
――だから時間がきっと解決してくれる。我儘放題で国のためにちっとも働いてくれないエグモント様も、時間が過ぎてばきっと立派な王になってくださる。あのすばらしい先王様のご子息であらせられるのだから。
急に七面鳥が食べたくなったから焼け、は当たり前。遠くの国の宝石が欲しいから一日で掘って持って来いだの、密林の奥地に住む貴重な動物が見たいだの、あのメイドは美人だから俺の女にしたいだの。
ストレスをためながらも、コートは必死でエグモントの要望を可能な限り叶えようと頑張ってきた。メイドの少女は泣く泣くクビにした上、そっくりな娼婦を探してきて見繕うなど涙ぐましい努力をしたのだ。なんせ、この国で王様の命令は絶対。王様が死ねと言われたら、どれほど国に尽くした部下であろうと殺されてしまうのがこの国の法律なのだから。
しかし。だからといって今回の命令はあまりにも無茶が過ぎたのである。
「雨音が煩い!煩いったら煩い!」
駄々っ子のように手足をバタバタさせて、でっぷりと肥え太った王様は叫んだのだ。
「おかげでゲームに集中できんではないか!おいコート!この雨音をどうにかして止めろ、止めるのだ!」
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