記憶

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 スッと細い光が差し込み、今だ!とばかりに大きな声で叫んだ。 「出してくれェーーッ! 今すぐこっから出してくれよ! 俺たちが何したっていうんだ。  ここにいるヤツ、みんな弱ってんだ。出してやってくれよ!」  そう言ったもののすぐに扉は閉まり、違う扉の開閉の音がした。ガラガラと、建材が崩れるような酷い音だった。 「じいさん。別の部屋もあるのかよ」 「いや、知らねぇなぁ。近くにも俺たちみたいに囚われてるのがいるのかもな。可哀想に」  アリタは諦めた口調で、ひとごとのように言った。 「諦めんなよ、じいさん」  出会ったばかりの顔も見たことないじいさんに、何とも言えぬ寂しさを感じた。  男たちが外にいることはわかっている。扉が閉まっていようが構わない。スズキは暗闇の中で大声で叫ぶ。
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