身に覚えのない出来事

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 冷気が頬をかすめ、スズキは目が覚めた。気がつくと、身に覚えのない暗闇に身を置いていた。 ーー臭っ。何だ? 何だここは。  三百六十度見渡しても、光はない。真っ暗でむやみに動くのは危険な気がした。 ーー夢か? 俺はさっきまで店にいた、はず。  暗闇の中、グィーンと動作音が聞こえる。 時々ゴボゴボと、まるで海に潜っているような深い音もする。身動きのとれない張り詰めた空気が、スズキの不安を一気に押し上げた。しばらくすると、遠くでガシャーンと鉛のような重い音と振動が、足元に届く。 ーー何だ?  スズキは音のする方に聞き耳を立てた。すると何やら聞きなれない足音が近づき、扉がガッと開いた。暗闇に突然眩しいばかりの強い光が差し込み、スズキを大きく包み込む。 「うっ……」  スズキは思わず光に背を向けた。そして男は何かを手に取ると、誰に声を掛けることもなく、再び扉を閉めた。 「あっ、ちょっ! 待ってくれ!」
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