身に覚えのない出来事

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 ワンテンポ遅かったスズキの声は、バタンと閉まる扉に消され、再び闇に戻る。 「お若いのーー。外に出たいのかい? それなら期待しないほうがいい。ここに来た以上は、そうは出られねぇ」 「あんだ? 誰かいんのかよッ!」  暗闇で、誰かが声をかけた。 「ふっ。今度は元気のいいのが入ってきたな。お前さん、名は何ていうんだい?」 「いいだろ。そういうお前は何なんだよ」 「俺か? 俺はアリタ。ここに来てもう随分経つ。体も弱っちまってな。暗くて見えねぇだろうが、頭はすっかり真っ白だ」 「何だ、じいさんか。ここから出られないってどういう意味だよ」  真っ暗でヒンヤリとした名もなき場所。どういう基準で選ばれここに来たのか、とんと見当もつかない。  ただ言えることはーー。
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