身に覚えのない出来事

4/4
前へ
/8ページ
次へ
「ここはゴミ箱みたいなとこさ。何でか知らねぇが、あの男は俺たちをここに連れてきたまんま、野放しにしてどっか行っちまう。何をするわけでも何を言うわけでもねぇ。  誰かに頼まれてるんだかそれもわからねぇ。男だろうが女だろうが、連れてきだヤツをただここに閉じ込めるだけなんだよ」 ーー何言ってんだ、このじいさん。夢だろ? 夢だよ。ぜったい夢だ! 「お前さん今。どうせ夢の中とか思っただろ。残念だが夢じゃねぇよ。現実の世界だ」 ーー現実? 夢じゃないってそんなバカな。  スズキはこのじいさんの話を信じることが出来なかった。むしろ異次元にでも放り込まれたと考えるほうが、まだ納得がいくと思った。とにかくあの男が来るまでは、光も見られないらしいことは、確かなようだ。 「俺たちの他にも、いるんだろ? ここに」 「ここには、そうさな。五、いや六……」 「そのわりに静かだな」 「そりゃそうさ。こんなとこにずっといりゃあ弱ったか、或いは口をきく元気もないかーー」 「じいさんはここに来て長いんだろ。元気あんだな」 「へっ。俺ァもともと辛抱強く出来てんだよ」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加