別れ

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別れ

「おい。開けろよ! あんたら何の目的で俺らをこんなとこに閉じ込めてんだよ! 出てこいよ。よぉーーッ。聞こえてんだろーーッ!」  スズキは目をまん丸にし、精一杯訴える。そしてようやくその声が届いたのか、運よく扉が開いた。 「おい貢ーー。何だよこれは。ひっでぇなぁ。こんな腐ったヤツばっか置いとくなって」  男はそういって黒いグローブを手にはめた。スズキは貢というやつに苛立ちをぶつける。 「腐ってるだぁ? ゴミみたいに言うなッ。元はと言えば、お前らのせいだろ。お前らがじいさん達を弱らせたんだろうが」  男の顔を睨みつける。しかし男はスズキの怒鳴り声を無視し、黒のグローブでじいさんを頭から鷲掴みにした。 「お別れだな。若いの」 「じいさーんッ!」  男は青白いカビの生えたみかんを掴んだ。ぷにゃぷにゃしたみかんを、イヤそうな表情でゴミ袋にボンと捨てる。 「貢ーー。そのみかん、いつのだよ。カビ菌で真っ白じゃん」 「忘れたわ。それよりこのスズキさぁ、さっきスーパーで半額だったんだ。悪くなるまえに刺身で食おうぜ。捌いてくれよ。  それで今日お前を呼んだんだからよ」  男は冷蔵庫から魚一尾とビールを取り出し、朝まで友達と呑み明かした。           了
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