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第4話 近づく距離
次の日曜日、菜緒はいつも通り図書館に来ていた。今日は中で勉強するつもりだったが、人が多く席が空いていなかったので、予定を変更して外のベンチで本を読むことにした。
外も天気が良く過ごしやすい日なので普段よりも人が多いようだ。芝生の上で遊んだり運動したりしている人たちがたくさんいる。元気な子供たちの声が響き渡っているが、その中でも一際声の大きい子供たちがいるのが見えた。小学生くらいだろうか、グローブをつけて3人で並んでいる。
「よろしくお願いしまーす!」
3人は両手を上げながら軽く手を振り誰かに挨拶をしている。菜緒は3人の視線の先にいる人物に目をやった。
「……あれ?」
その人物は背が高くスラリとした体型で、しなやかでキレイなピッチングフォームから3人のうちの1人に向かってボールを投げた。
「蓮見くん?」
菜緒はじっと目を凝らしてその人物の顔を確認した。子供たちに声を掛けながら笑顔を見せているその人物は間違いなく淳人だった。学校では決して見せない表情だが、中1の夏に菜緒が見た笑顔と同じだ。
淳人がここにいること、子供たちとキャッチボールをしていること、笑顔見せていること、菜緒は色々と驚きが隠せなかったが、なんだか嬉しい気持ちになった。淳人が心の底から楽しそうに笑ってるのを見て、淳人は噂されているような冷たい人間じゃないということに確信が持てた気がしたからだ。菜緒は心の中が弾むのを感じながら嬉しい気持ちを抱えて本を読み始めた。
しばらく本に夢中になっていると、淳人と子供たちがキャッチボールを切り上げている様子が目に入ってきた。少し楽しそうに話をした後、子供たちは「ありがとうございました」とお礼を言いながら淳人に別れを告げて、その場から帰っていった。
淳人は軽くストレッチをした後荷物を整理して、自転車小屋の方へ向い歩き始めた。
――あ、こっち来る。
淳人のいるところから自転車小屋までの間には菜緒が座っているベンチがある。自分には気づいていないであろう淳人がこっちに向かってくることに菜緒は妙に緊張した。しかも、淳人とは入学式以来言葉を交わしてないし、あのこともあったので急に話しかけるのには少しためらいがあった。
だが、「淳人と少しでも仲良くなって淳人のことを知りたい」という気持ちから菜緒は意を決して淳人に声を掛けることにした。
「蓮見くん」
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