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菜緒は思い切って声を掛けた。少し下を向いて歩いていた淳人は菜緒には全く気づいていなかったようで、その顔を見て驚いた表情を見せた。
「……間宮さん?」
すぐにいつものクールな顔に戻り、淳人は立ち止まった。呼び止めたはいいが、菜緒は次の話題を全く考えておらず、2人の間にはしばしの沈黙が流れた。
「「……」」
最初に沈黙を破ったのは話しかけられた淳人の方だった。
「……英語の本?」
菜緒が持っている本をチラリと見て淳人は尋ねた。
「え?うん、そう……」
「そっか」
返事は素っ気なかったが、菜緒には淳人が少し微笑んだように見えた。
「……蓮見くんは野球の練習?」
また沈黙が続きそうになったが、自分から話しかけておいてそれは失礼だと思い、菜緒は慌てて質問をした。
「うん、まあ一応ね」
「男の子たちには野球教えてたの?」
「いや、ちょっと頼まれてキャッチボールしてただけだよ」
「そっか。……元気だったね、みんな」
「……あ、本読んでたのにうるさかったよね。ごめんね」
「え、あ、そういうことじゃなくて……その微笑ましかったっていうか、こっちも楽しい気持ちになったっていうか……」
「それならよかった」
淳人は表情を変えずに答えた。本当は色々と話をしたかったたが、もしかしたら淳人は迷惑してるかもしれないので今日はここで切り上げようと菜緒は話を変えた。
「あ、なんか急に話しかけちゃってごめんね。ビックリしたよね」
「いや、大丈夫だよ。まあ、ビックリしたけど」
表情を変えずにそう答える淳人のクールな雰囲気に飲まれてしまいそうだったが、菜緒は最後に1番聞きたかったことを思い切って尋ねてみることにした。
「……学校でも話しかけていいかな?」
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