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第6話 ホームルームの出来事
5月末のある日のホームルーム。クラスでは7月に行われる球技会の実行委員を決める話し合いが行われていた。だが、誰もやりたがらず話し合いが長引いていた。
「誰かいないかー?」
担任の向井がクラス全体に呼びかける。だが、明らかに面倒だと分かる役割を積極的に引き受けようというものはいなかった。それぞれが、断る理由を探している。
「部活ないやつがやれよ。」
「部活やってないからって暇ってわけじゃないよね。」
「そうそう。バイトとか塾とかあるし。」
「部活やってるやつだけが忙しいわけじゃないんだよ。」
「先生、部活やってるとか関係ないですよね?」
ある生徒の問いに向井は「そうだな」と頷く。
「確かに部活やってると大変だけど、誰かが今言った通り部活なくてもバイトしてたり塾行ってたり、何かしらみんな予定があるからな。」
平等性を持たせるために言った向井の言葉だったが、それによって生徒たちは何とか自分はその役割を避けようと断る理由を口々に述べ始め、よりクラスは騒がしくなった。
「先生!俺から推薦してもいいですか?」
そんな中、吉川匠が突然立ち上がり手を挙げた。匠はクラスの中では不良とまではいかないが、少々ヤンチャなグループに属しているちょっぴりチャラい生徒だった。
「自薦か?」
匠の言葉に向井はからかうように尋ねる。
「いや、まさか。俺みたいなバカより真面目な人の方がいいでしょ?」
「まあな」
ふざけながら発せられた匠の言葉に対する向井の返答にクラスはドッと沸いた。
「それはそれでひどいな、先生」
「悪い悪い。で、誰がいいんだ?」
向井に尋ねられ、匠は少し意味ありげに微笑みながらその人物の名前を言った。
「蓮見くんがいいと思います」
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