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第7話 隠せない苛立ち
匠はいつも一緒につるんでいる仲間と共に帰り道を歩いていた。
「なんか悪者になっちゃったな、お前」
仲間の1人である神戸佑斗が匠の方をポンポンと叩きながらからかう。
「うるせぇな」
匠は佑斗の手を払いのける。冷たくあしらわれた佑斗は、その後ろを歩く他の仲間に向かっておどけたしぐさを見せた。そんな姿を見て仲間たちはクスクス笑いながらも、匠の機嫌をとろうとフォローを入れ始める。
「でもさー、間宮さん、良い子ぶってるよね」
「あんな風に言って立候補するなら最初からやれっつーの」
「ホントホント。匠に当てつけるみたいな言い方してさ」
「そうそう、かなり嫌味っぽいよね」
匠の後ろを歩いている上原沙苗と葛城加恋が口々に菜緒に対する不満を言い始めた。
「でも、ちょっと意外だよな。大人しそうな顔してあんな風にできんの。ちょっとグッと来たわ」
その2人の少し前を歩いている藤山圭吾がちょっとふざけながらそう言うと、早苗と花蓮の隣にいる前橋葉月が吹き出す。
「え、圭吾、嘘でしょ?ああいうのがタイプなの?いかにも真面目で頭堅そうでつまんなそうじゃん」
バッサリと菜緒を評価する葉月の言葉に佑斗が若干引き気味で笑う。
「葉月、お前キツイなー」
「まさかあんたもああいうのがいいの?」
「いや、そういうんじゃないけどさ、意外とああいう子の方が豹変するっていうかさ、あっちはすごかったり……」
佑斗の何か意味を含んだような言い方に女子3人は大げさに笑う。
「ちょっとあんた、何考えてんの?」
「やらしー。っていうかああいう子はあっちもつまんないって」
「そうそう。単なる男子の願望っていうか妄想だよ」
口々に浴びせられる言葉に「そういう意味じゃねえよ」と佑斗はムキになって否定した。そんな様子を見て圭吾はゲラゲラと大笑いしている。
すると、匠が突然立ち止まり不機嫌そうな表情で黙り込んだ。佑斗たちはそれに気づき少しずつトーンダウンしていく。そして、不思議そうに匠を見つめた。
「……悪い、俺1人で帰るわ」
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