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それまで黙っていた菜緒が急に言葉を発したので、3人は驚いて菜緒の顔を見る。そんな3人の反応を見て、菜緒は思わず言葉を発した自分に驚く。
「あ、ごめん。あの、わたしも蓮見くんのことはよくわからないんだけど……何となくそう思っただけ……」
以前淳人と会ったことがあるという記憶は自分の勘違いかもしれないという不安があるので、菜緒はその記憶のことは話さないでおこうと思い、慌てて自分の発言をごまかそうとした。
「あと、かおりの言うとおり、マサくんは確かに人懐っこいけど、誰でもいいってわけじゃないから。性格悪い人とか近づかない方がいい人とまで仲良くしたりはしないし。……だから、たぶん蓮見くんはみんなが噂するような冷たい人とかではないし、きっと優しい人だと……思う」
菜緒の言葉を聞いた3人は驚いた顔のままだった。菜緒は自分が何か変なことを言っているからかと不安になって3人の顔を見ていたが、3人の目線は菜緒の方ではなく菜緒の少し後ろの方を向いている。菜緒が不思議に思っていると、自分の後ろを誰かが通るのを感じた。
そして、その人物が何も言わずに愛華の隣の席に着いたのを見て菜緒は言葉を失った。菜緒たちが集まって話しているのは、愛華の席の周り――そう、今菜緒の後ろを通って席に着いたのは紛れもない淳人だったのだ。
――どこから聞かれてたんだろう……
菜緒は急に顔が熱くなるのを感じた。チラッと淳人の方に視線を向けたが、淳人はこちらを気にする様子もなく授業の準備をしている。
自分は悪口を言っていたわけではないが、別に仲良くしているわけじゃないのに、何かわかったようなことを言ってしまったのが、なんとも申し訳なく感じた。だが、淳人がどこまで自分の言葉を聞いていたのかもわからないし、謝るのもおかしい気がする。
どうするのがいいか分からず何とも気まずい気持ちになった菜緒は「席戻るね」とだけ言い残してその場を離れた。3人もそんな菜緒の気まずさを察して「うん」としか言えなかった。
菜緒に続いてかおりと玲が席に戻った後、淳人の隣の席である愛華はチラチラと淳人の様子を見ていたが、特に淳人から何かを言われたり、淳人がこちらを見ることはなかった。
菜緒はというと、淳人に対する気まずさと申し訳なさが消えずになんだかずっとソワソワしていて、その日は全く授業に集中できなかった。
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