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第3話 あの日のこと
「え?本当に?」
「うん、あいつがそう言ってたよ」
部活から帰った後、正紀は淳人の言葉を伝えるために菜緒の家に来ていた。淳人が菜緒に対して感謝の言葉を言っていたことを話すと、菜緒はホッとしたような嬉しそうな顔をした。
「で、何があったの?」
「いや、そんなに大したことではないんだけど……」
興味津々で尋ねてきた正紀に菜緒は今日の出来事を簡単に話した。
「なるほどな。そういうことか」
「そう、かおりたちは悪口言ってたわけじゃないんだからってフォローしてくれたけど、やっぱりなんか気まずくて……」
菜緒は今日のことを改めて振り返って苦笑いした。
「まあ、宮下たちの言う通りだよ。全然悪口じゃねえし、蓮見がお礼言いたくなる気持ちも分かるよ」
正紀の言葉を聞いて菜緒は改めてホッとした表情を見せる。言った後で正紀は自分の中に浮かんだ疑問を聞いてみることにした。
「……でもさ、蓮見のことをそういう風に言って庇ったのって何か他に理由あるんだろ?」
「え?」
「その時は俺を理由にしたみたいだけど、菜緒の中であいつが噂されるようなやつじゃないって思う別の何かがあったんじゃねえの?」
正紀からの思わぬ問いに菜緒は固まった。やはり長い付き合いの正紀をごまかすのは無理なようだ。
「……わたしさ、蓮見くんに会ったことあるんだ。……多分」
「そうなの?でも、多分って何だよ」
「いや、そうだと思うんだけど、あまりにも今の蓮見くんと違うから、もしかして記憶違いなのかなって思ったりもして……」
菜緒はそう言いながらポツポツと淳人と出会った時のことを話し始めた。
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