レンタルショップ

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 一時間前のことである。心地が良い秋のそよ風は、朝から僕の気持ちを穏やかにしてくれる。この日は、たまたま大学の講義が一つもなく、午前中から勉強に勤しもうと、勉強道具をリュックに積め近所のファミレスへ向かった。朝の十時に開店なのでそれに間に合うよう家を出たが、途中、道路下の配管工事が行われており通行止めとなっていた。  しかたなく迂回することにした僕は、近道をするために路地を抜けようとした。初めて通る狭い通路は、基幹道路とは全く雰囲気が異なる。建物と建物の間に挟まれた閑静な空間の中で、光と影が共に主張する。お香のような神聖な匂いを感じる小道は、まるで別世界に感じた。  そんな通路に一軒のお店があった。入口には『レンタルショップ視覚屋』とある。「こんな路地で、お客なんか来ないだろう」と思いながらも、一風変わった店名が気になり、店の前で立ち止まった。  見るだけで借りなくても大丈夫だろうと、安易に考え店内に入る。そこは、食堂のような間取りだった。
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