花なんかみえない

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カタ…カタ…それは歩くたびに一定のリズムを刻みながら、鳴るのだ。ははあ、これはきっと、歩みに応じて鞄が揺れることで、中に入っているなにかが動くのだなと、答えを導き出し安堵してから、着るのを免れなかった体に合わない衣服をどうにかできないものかと、それを拘束するボタンを指でいじる。首に巻きつく紐やら、三角の布、厚い羽織ものと、その下の忌々しい半分のズボンを思い出して、素足のふくらはぎに、細めた目を走らせる。この白いものが逃げるのも、ようやくわかってきた。天候の割に風が強くて、さっきから足がすかすかとして気持ち悪くていけない。逃げろ逃げろ、この先は風も強くて危険だと言っているのだな。きっとこんなにすかすかした足では、腹にきて明日には痛くてたまらなくなるに違いない。やっぱり逃げるのが得策だ。 ズボンというのは、長くなくてはいけないのに、やっぱりこれも、今日だけはと無理に身に着けさせられて、まったく気分が悪い。 カタ…カタ…背中ではさっきと変わらず音がしている。家から出た時には気付かなかっただけで、ずっとずっと鳴っているのだろう。靴とソックスに夢中になっていて気付かなかっただけかもしれない。
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