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「ごめん、明日のフライトの準備をしたい」
「それなら、俺も帰るかな」
誠人はどこか残念そうな顔をしながら、駅に向かって先に歩きだした。朱里も少し歩調を速めて誠人の隣を歩く。
最寄り駅で誠人と別れ、昼食を何にするか考えながら、家に向かって歩きだす。
着信音に気が付き、スマホを見ると、誠人からのメッセージが来ていた。
『今日は楽しかった。明日からまたよろしく』
のんきなメッセージに朱里は簡単に返事をしながら、今日誠人がしていたことを思い出す。
――相手の視線に合わせる
――穏やかな声で、ゆっくり話す
明日のフライトで早速実践してみよう。もしかしたら何か変わるかもしれない。
家に帰ったら、表情筋を鍛えながら、ネットで素敵な笑顔のコツがないかももう一度探してみよう。
朱里が予定を立てていると、再びスマホが鳴った。メッセージを開けるとまた誠人からだった。
『笑顔の秘訣は、面白いものを観ること。表情筋とか鍛えるなよ』
「面白いもの……」
メッセージにはおすすめ動画のリンクが張ってあった。
誠人流の訓練は芸人の動画を見て笑うと言うことだろうか。
誠人の意図するところはよくわからないけど、合格をもぎ取るためにもこの際何でもやるしかない。
送られてきた動画を確認すると、動画は百本を超えていた。あまりの多さに慄くが、腹を括って動画を一から順にみることにした。
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