笑わないCA

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 ギャレーは既に戦場と化していた。  すぐにドリンクサービスを始めないと、全てのお客様に配り終えることができなくなる。誠人と共に準備をして、客室内に出ると、高校生たちはカメラで自撮りをしたり、カードゲームで遊んだり、持ち込んだお菓子を分け合ったりしていた。 「何になさいますか?」  一人一人の希望を訊きながら、手元はドリンクの準備を順にしていく。 周囲の様子を気にかけながらサービスをしていると、機内アナウンスが入った。 『この先揺れることがありますので、シートベルトサインを点灯します。お客様におかれましては、お席にお座りになってシートベルトを着用していただきますようお願いします』   担当エリアにいる最後の高校生にドリンクを渡してから、朱里と誠人はすぐにギャレーに戻った。  機体が揺れる可能性があるため、高校生たちが全員自席に戻っているかを確認していると、一人分の空席があった。 「こちらのお客様は今どちらにいらっしゃいますでしょうか」  朱里の記憶の中では酔い止め薬を飲んだあの女子高生のはずだ。 「それが……」  隣の席のクラスメイトらしい女子高生は、心配そうに後方のトイレを見ている。彼女に礼を言ってから、席を離れる。周囲の着席状況を確認しながら、一番後ろのトイレに行くと、案の定誰かが入っていた。  軽くノックしてから、朱里は声をかける。 「お客様、体調がすぐれないでしょうか」 「す、すみません。どうも気持ち悪くて」  声がくぐもっているが、あの女子高生だ。少し考えてから、朱里は再度女子高生に声をかけた。 「シートベルトサインが点灯しておりますため、お座席にお戻りいただけますでしょうか」 「で、でも気持ち悪くて」
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