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「ラウラ殿相手では勝ち目がありません」
「誰よりもミサ様をご存知の方が好敵手(ライバル)では……」
手に取るように白々しい辞退が相次ぐ。
演技するならもうちょっと展開意識しろよ。
あからさま過ぎるだろ、ラウラ以外騙されない……ぞ。
あ、ふたりは気がついている。
私の性格を知っているのだから。
だから───この茶番劇はラウラのためのものだと悟らざるを得なかった。
マジかよ……。
「え? あの……」
分かりやすく戸惑う姿に同情の念を感じてしまう。
「皆が辞退してしまってはのう? 」
『そうですわねぇ。ねぇ、ミサ? 』
矛先来たァァァァァ!
意識した瞬間、瞬間湯沸かし器のように私は真っ赤になり、思考停止(ショート)してそのままひっくり返った。
だが、いつまで経っても衝撃は来ない。
「ミサ! どうした!? 」
距離があったにも関わらず、ラウラが血相を変えて眼前に迫っていた。
……ああ、魔法使ったのか。
イケメンが近い、眩しい。
私はそのまま気絶した。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
あれから、あれよあれよという間に両陛下に転がされ、ラウラと一緒になることに……。
あんなにいがみ合っていたのに、気がついたら共にあることが義務から自然になっていた。
恋愛感情と言うより、隣にいることが当たり前になっていた。
無意識に意識していなかったけど、意識したら照れる。
私なんかって気持ちが先行して考えていなかったのに。
想いを告げられた途端ぶっ倒れたけど、落ち着いてみたら、これからもこの人の隣にいていいんだって何だかほっとした。
現金だなって思う。
好きになるって力まなくていいんだなって。
物語の中でしか恋愛なんて知らなかった。
出会わないように人目を避けていた。
出会ってしまったらストンと落ちてくる、感情が。
感じたことのない、暖かい気持ち。
そんなことを考えながら、目の前で白いタキシードに身を包む、変わらず眩しいのに真っ赤な顔の彼を満面の笑みで見つめた。
『前向きにしてくれたあなたと、これからも一緒に居られる幸せをありがとう』
そっと心の中で呟いた───。
*⋆⸜Fin⸝⋆*
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