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いたたまれなさと苛立ちの狭間で
……何たることか。
私は後悔していた。
なんの事か? 目の前の光景にだ。
眩しくて目が霞んでいると思いたい。
通された『神子の部屋』が、想像を絶していた。
多少は予測できたはずだ。
神子の部屋なのだから、この異世界の(たぶん)いちばん重宝される女性のための部屋なのだから。
葛藤しても繰り返すだけなので、端的に説明しよう。
単色花柄フェアリーピンクの柔らかそうなレース折り込み天蓋(プリンセス)ベッドとカーテン。
併せのベッドシーツや枕カバーなどは柄なしのシンプルなホワイトパール。
椅子やテーブル、鏡台などの調度品はツヤを最大限に出したかと思うほどの白樺みたいな高級木のアンティーク。
絨毯は踝が埋まるほどの毛足の円形でサーモンピンク。端はわざとチラ見せしているかのような薄茶の木目。
……癖で啖呵切る前に帰還を受け入れるべきだったか?
でもそれだと自分が自分を否定しているようで居心地が悪い。
ここは有言実行。ハズレならば明日にでも帰される。
……つまらなく、言葉の通じないあの現実(リアル)に。
まぁ、考えてみれば派手ではない。
自分には分不相応で可愛い過ぎる部屋だと思うだけ。
「一晩、こちらをお使いください。お食事は侍女が各自お部屋にお持ちします。では───」
ラウラは足早に立ち去った。
主に逆らえないとはいえ、私がこの部屋に泊まることを快く思っているはずがない。
一晩だけだと自分に言い聞かせているのは私だけではないのだ。
まぁ、そもそも仲良く食堂で食べる者などいないだろうし。
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
食事も寝心地も良すぎて逆に違う疲労を感じた翌朝。
分不相応だという思いが場を楽しめずにいることくらいわかっている。
昨晩の侍女に伴われ、私はまた召喚の間に舞い戻った。
案の定、また注目を浴びた。
「お待たせしてすまない。早速始めさせてもらう。……ミサ」
約束通り先発で呼ばれ、前に出る。
視線が痛い。
ただの平らな魔法陣が凹凸を持ち始め、突起していく。
最後にはぐにゃりと玉を排出して乗っかり、魔法陣と一体型のよくある祠最深部にある感じのアレになった。説明が難しい。
「そのクリスタルに手をかざせ」
言われるがままに手をかざした。
……私を風や火や水、電気が取り囲むように撫でて行く。
「……」
手を離すとゆっくりクリスタルに戻って行った。
……今の、なに?
周りも凍りついたように静まり返る。
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