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息苦しい空気の中にいるくらいなら帰りたくなっていた。
順番におなじ所作をしたが、私より様になっているだけで残りの30人すべてが無反応に終わった。
終わるごとに謝りながら帰していた姿に終始イライラとしていた。
私は1度も謝られていない。
自分のミスを当然のように語り、当然のようになかったことにしようとしたやつの綺麗な顔に張り手してやりたい気分になった。
人が捌けた。
「残念だが、今のところおまえのみ反応を見せた。仕方ない、次のしょ───」
一宿一飯ですべて流されたことを察し、右手が無意識に振りかぶる。
「やはり彼女が残ったな。魔力を無駄遣いして空振りを続けたいのか? おまえは美女と並びたいのか、国を救いたいのか、どちらだ? 」
おどけた口調で、しかし瞳は笑っていない国王が入口に寄り掛かっていた。
「へ、陛下! しかし……! 」
「異世界の美女がほしいだけならお気に入りをのこせばよかったろう。何も持ち合わせていない美女を」
ガクリとうなだれる。
寛大ではあっても、見た目が気に入らないから次、と言う考えまで見過ごすつもりはないのだろう。
私は手持ち無沙汰になった手をゆっくりと下ろし……。
───パシ。
優しくシワの寄った手が私の手首を取った。
無言で微笑む国王があらぬ行動に出る。
───パン!
私の手を器用に操り、ラウラの頬を腫らした。
急なことに固まってしまう。
このおっさんこわい!
「やりたかったのだろう? いや、やるべきだな。美女に謝る姿を睨みつけて、皆いなくなったら今にもやりそうな剣幕だったぞ。わかるぞ、終始ミサには失礼な態度を取り続けて続行しようとした最低な男だ。何発でも食らわせてやるがいい。気が済むまでな」
青ざめてパニックになりながら謝り倒すラウラ。
自分の顔が自慢だったんだろう。
全力で追従から逃れようとしていた。
言っていることが支離滅裂だった。
「……折角許可頂いたのに申し訳ありませんが、回数で解消されるものでもありませんので今後のサポートに期待させて頂く形でお願いします」
「自慢の顔をはたかれながら泣いている姿をみてわしもストレス解消したかったが仕方あるまい。やはり1番は仕事が出来るかだな。130回も失敗しただけの成果を期待しよう」
この王様、ドSだ。
ラウラはどちらにしろ涙目だ。
私に泣かせる趣味はない。
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