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正論厨の私が輝ける場所
陛下監修の元、ラウラと共に兵士を伴い、戦いの中に身を置く日々。
かたや城の中にいるときは王妃に伴われ、淑女としての礼儀作法や嗜みを仕込まれる優雅で多忙な日々。
こんなにも注目され、必要とされる場所があるなんて思わなかった。
大変だけれども、満たされていた。
地味でいつでもすげ替えられるほど取るに足らない人間だった私に、私にしか出来ない仕事と居場所をくれた。
毎日が楽しい。
疲労も幸せの内だと思えるなんてびっくりだ。
みんな私を個人として見てくれる。
それがくすぐったくて嬉しい。
しかし、そこは私。たまに我に返る。
これは夢では無いのだろうかと不安になる。
帰りたくない。帰ったところで実は家族なんて当にいない。
首繋ぎとはいえ、仕事はあったから1人でも生きていけた。
だがそれは、生きた屍のよな毎日でしかなかった。
急にこちらに来たときは上司に連絡をと焦ったりもしたけれど、すぐにいなくても何とかなるよなぁと割り切れた。
よく名前を間違われるし、記憶にもあまり残らない。
家族が居ないことで悪目立ちしたくなくて意識して空気でいようとしたからだろう。
自分が可哀想だなとは思わなかった。
世の中の摂理だと淡白に捉えていた。
無表情で感情のこもらない機械的な対応をし、自ら人の意識に残らないことに尽力した。
人は無常にも心配してみせることで自分の優位さをアピールする人種がいる。
すべてがそうではないが、下手に他人に踏み込まれることを避けた。
苦しさや淋しさ、哀しさを感じてしまわないように。
意識させられることを嫌ったのだと今では思う。
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