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私を必要とし、肯定してくれる世界で生きる
皆若い男性だと言うことを気にも止めなかった。
脂汗で固まる私を尻目に、まさかの全員が乗り出す。
やめろ、私にモテ期を与えるな。
怖い、ラブコメとか空想の域を出ないから楽しめるんだ。
自分の身に降り掛かって、ヲタク脳が久々に暴走を始める。
わかるだろ、この中からひとりを選ぶ耐え難い申し訳なさは可愛い子のためのものだ。
身も心も地味な私には身に余る重責なんだぞ。
一人一人が口々に私を称える言葉が痒い、逃げたい。
「ミサ様が戦場に共にして下さるだけで不思議と力が湧きました! 」
「ミサ様が軽装で城下町にいても、空気がちがいました! 」
等々、褒め殺しから耳を塞いだ辺りの歯の浮くようなセリフの数々に産まれたての子鹿の気分になったのは言うまでもない。
やめてくれよ、毎日そんなセリフ吐くような旦那欲しくない。
「ま、待ってください! 」
「何じゃ、ラウラ」
『なぁに? ラウラ』
「わ、私にもその権利をください! 」
静まり返った。
私は石化した。
「ほう? おまえが? 理由を言うてみよ」
「は、はい。最初の印象はお互い最悪でした。しかし彼女の真摯で誠実な働きを3年もの間、一番近くで見てきました。出会いが出会いでしたから、お互いに憎まれ口も言い合って来ました。確かに興味がありませんでしたよ。求めていた神子像に……夢を見過ぎていた自負はあります」
前説が長いのは私のせいか?
『それで? 』
私はハッとした。まさか……。
「い、一緒に過ごすうちに不思議な感覚になり、王妃殿下による魔法のような変身にも驚きました。気がつけば周りはミサの話ばかりして胸中穏やかでは無くなりました。最低なことをしたことを悔やみました。都合がいいかもしれない。でも───彼女を取られたくない。だから、選ばれる立場で構わない。私を候補の末席にお願いします! 」
私はかれどころか、恋愛のれの字も視野に入れていなかった。
だから彼の変化に気が付かなかった。
『あらあら、皆様どうしましょう』
どうしましょうって割には楽しそうだな。
客観的に俯瞰する癖のせいでふたりの思惑に気がついてしまった。
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