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ポカンとしながらそう返すと、翔馬はズボンのポケットに入れていたスマホをサッと取り出す。
「ちょっと電話しますね」
「誰に?」
「和希です。あ、志野 和希っていう名前なんです。さっきまで巧さんが話してたっていう相手」
「し、志野さんに電話するのか?」
「はい。電話の内容、巧さんにも聞いていてほしいのでスピーカーにしますね」
そう言うと、翔馬は画面上で指をスライドさせ、志野さんに電話を掛け始める。
スマホのスピーカーから、志野さんを呼び出す着信音が俺にも聞こえてくる。
三回目の着信音で志野さんの『もしもし、翔馬?』という明るい声が耳に届いた。
「もしもし、和希? 早速だけど、何で俺が電話したか分かってるよね?」
翔馬が勢い良く詰め寄ると、スマホからは志野さんの陽気な笑い声が聞こえてきた。
【あははは! ごめん、ごめん! だって、あんな場所で翔馬の奥さんに会うなんて超偶然だなと思って、つい!】
……⁇
未だに状況が飲み込めない俺をよそに、志野さんは話を続ける。
【でもさ、翔馬が政略結婚したって聞いて心配してたのは事実だぜ? だから、翔馬のいないところで俺が逸見さんの本音を聞き出そうとしてやったんだよ。他の誰でもない、お前という従兄弟のためにさ】
従兄弟……?
従兄弟ォ‼︎⁉︎
そう言えば、結婚が本決まりになった時にお互いの親戚に挨拶回りには行ったが……語学留学中だという翔馬の従兄弟には未だに会えていなかったな。それが志野さんだったのか……。
「和希の、そのからかい癖、本当にやめろって言っただろ! 巧さんは実は誰よりもピュアで清い人なんだから、そういう嘘もすぐに信じちゃうんだから!」
……やめて。俺をこれ以上、辱めないでください、翔馬サン……。
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