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プロローグ(その1)
(ここは南海の孤島か、軍事基地か……)
松岡は、自分が辿り着いた所がいったいどこなのか、何も知らないでいる。
周の手配した船は日本を出たあと南へ下った。5日程して松岡と妻の二人は、上陸すると言って居室が設えられたコンテナへ入った。
船が停止しコンテナが吊上げられ、ガタゴトと走った。最後にドアが開き外へ出た時、潮の香りと鳥の泣き声、そして蒸し暑かった。
ただコンテナは既に駐車場の中にあり、人型のロボットが二人を待ち受けていた。どこか夢見心地の様な機械音に案内されるまま、駐車場のロビーからエレベーターに乗った。
建物は地下だった。下るエレベーターでB8まで降りた二人は、通路奥の一室へ。そこはテラス付きの豪勢な部屋だったが、外に見える景色は壁に移る映像でしかなかった。
「長旅でお疲れでしょう、少しお休みなったら、このウォッチにお声掛け下さい。食事、ご見学、私が内部をご案内致します」
身長1メートル程.お地蔵さんの様な頭に丸い目が二つ、体はコートを羽織った様な姿。
「ありがとう」と答えながら、そう言われてみればと思いながら、松岡は時計を受け取る。
「ああ……、君は……」
と言った途端、ロボットは、
「ハナ、と及び下さい」
と即答する。
(こいつ人の心を読むのか)
と、松岡は勘繰った。だが躾の行き届いたホテルであれば場の状況を先読みするスタッフもいると、ひとりで納得するのだった。
「ハナ……、よろしく――」
「は、では失礼します……」
そう言うとハナは踵を返して部屋を出て行く。静かに閉じるドアに、何もかも自動化されているのかと思うと、松岡は憂鬱だった。
「なんか、まるで別世界ですね」
と、テラスを見ていた淑子が言う。
「でも、正直お腹が空きました」
と言って微笑む淑子、その明るさが松岡には救いだった。
(つづく)
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