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黄昏時。そろそろ帰らないと親に心配される時間帯になってきた。僕は早く帰りたくて仕方無かったが、章達が遊びから帰ってくる気配は無かった。メリーゴーランドやら観覧車やら、幻覚に囚われている如く離れようとしないのだ。
「ねぇ章、美香、梓、帰ろうよ••••••」
「やだ、いっぱい遊ぶ」
「お母さん達が心配するよ」
「やだ」
「••••••なら僕だけで帰る。怒られても知らないからね」
3人同時に放たれた言葉に恐怖と疲弊がズッシリと乗っかる。僕は薄情にも3人を置いて帰ろうと足を出口に向けた。けれど、腕を誰かに引っ張られて強く腰をコンクリートに叩き付けた。痛みというより、変な滑り気と冷たさを感じて掌を見た時ゾッとする。
「なに••••••これ、血?」
何も落ちていなかった。誰も怪我をしていなかった。なのに、僕の服にも手にもベットリとした赤黒い血が纏わり付いていた。血糊じゃないホンモノの血は鉄錆の濃厚な臭いがキツくて、僕は吐き気を堪えるのに必死だった。蹲って耐えていると尋常じゃない冷気が僕を包み込んだ。
それに気を取られていたから、目の前に来た白いワンピースに気が付かなかった。
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