味のしないかき氷

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夏休みが始まってから1週間。章から貰ったチケットと財布、スマホを持って僕は遊園地前で待ち合わせた。近寄る事もなかったその場所に行くまで呼吸を整えるので必死だった。章達は何の違和感もなく乗り気で、楽しむ気満々だったのだ。そんなところに水を差したくはなかった。 蝉の鳴き声が頭の中で反響する。このまま熱中症を気取ってバックレようかとも考えた。けれど、あの都市伝説サイトが気になった。あの話が本当なら、章達は行方不明となる。彼は友達だし同じ中学を受験する予定なのだ。••••••折角誘ってくれたのにと、僕は2つの恐怖の狭間で揺れていた。 『嫌われたくない』という恐怖と、『死にたくはない』という恐怖。死ぬと決まった訳じゃない。でもあの辺りで何人かの子供が数年前に失踪しているらしい。『遊園地』の件は••••••本当かもしない。 結局、僕は遊園地前まで来てしまった。既に章達は来ていて、僕に気が付くと手を振ってくる。僕が力なく振り返すと怪訝そうに見詰められたものの、暑さが原因だと思ったらしい。 「待ってたぞ!早速入ろうぜ!」 「楽しみだね!」 「コーヒーカップ乗りたいな!」 遊園地に目を向けた瞬間、彼らは振る舞い始めた。困惑しながら彼らの後を着いていく。章、美香、梓は楽しそうに園内に入っていくけれど、僕には
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