味のしないかき氷

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彼らは『立ち入り禁止』のテープを引き千切るようにして中に入っていく。章達の目に遊園地はどう映っているのか、それは定かでは無いが、確実に何かに充てられているのは明白だった。 僕が後ろに後退りすると、ドンっと何かにぶつかった。後ろを振り向くと前髪が長めの背の高い男の人だった。20代後半ぐらいだろうか••••••半袖のポロシャツと黒の短パンというラフな姿で、コンビニ袋を下げている。 「ご、ごめんなさい」 「俺は平気だけど••••••危ないよ、ここ廃墟だし」 「で、ですよね••••••」 「それにこの遊園地、俺の姉さんが死んだ場所なんだよね。もう20年ぐらい前になるけど」 その言葉に背筋がひんやりした。まさかこの遊園地で死んだ人の家族だとは思わなかったからだ。歩きでコンビニに行ったのだとしたら、この近辺に住んでいる人だろう。僕はズボンをギュッ握ってから、章達の後を追う為に彼を振り切った。 彼は何かを言おうとしていたようで、1度振り返った時の顔は困惑に満ちていた。
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