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キャハキャハと楽しげな声を発しているのは、美香と梓だ。既に土や黴で色が変わっているボロボロのコーヒーカップに乗っているというのに、その動きはまるで新品同様だった。錆びて耳障りな音を出すものとばかり思っていた••••••と言っても、そう思い続ける事で僕はそう聞こえるようになっていった。
タタタ••••••と軽い足音が隣までやってきたと思うと、章が俺にかき氷の入ったカップを1つ差し出した。シロップの色的にはメロン。鮮やかな緑色で、あぁやっぱりここは遊園地なのかな••••••と錯覚しそうになる。それを振り切る事が出来たのは、章がした次の行動だった。
章はもう1つのかき氷のカップを、僕の隣に差し出したのだ。夏の暑さで目がおかしくなったのだろうか。僕の隣には誰も居ない筈なのに――。
「待たせて悪かったな、結構混んでて。••••••どうした?」
「う、ううん、何でもないよ」
章は隣のベンチに腰を下ろして、楽しそうにしている女子2人を眺めている。その隙に僕は自分の隣を見遣った。全く違和感を覚えていないメンツにはもう頼れない。
僕は隣に座り、章から貰ったレモン味のかき氷を食べ進める見覚えの無い少女に声を掛けた。
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