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「……さま。……お客様」  先程の女性の声に俺は目を覚ました。体を起こすとそこにはあの女性が座っている。 「あれ?」  俺は辺りを見回すがどこを見ても俺の家。 「おい。夢なんて見てねーぞ?」  そう言うが女性はニッコリ笑ったまま。 「ご安心ください。現在、見ていますよ」 「何言ってんだ?」  首を傾げながら俺はある事に気が付いた。それを確認する為に額へ手をやるがやっぱり貼り付けたはずのアレはない。 「一度、ご自分の腕を摘まんでみると確実かと思いますよ」  そう言われるがまま自分の腕を抓ってみる。だが痛みは全くなかった。 「お分かりいただけたでしょうか?」  驚愕のあまり頷くことしかできない。 「ここは夢の世界。どんな願いでも叶う空間です。現実を気にする必要も無い。全てが思い通り」  女性はそう言うと手に火の玉を出し手見せた。それを両手を合わせるように消し、かと思えば離れた掌の間から小さな竜が姿を現し俺の部屋を飛び回る。指を鳴らせば竜は何倍にも大きくなり部屋の中で窮屈そうに声を上げた。  だがもう一度鳴らせば一瞬にして消え去る。 「これから十分間はお客様の自由時間となります」  そしてパパンっと手を叩くと巨大な目覚まし時計が現れ、同時に箱も机に置かれた。 「こちらはご自由にお使いください。ですがこちらはお試しとなっておりますのでこの部屋から出る事は出来ません」  声を聞きながら箱の中を覗くとそこには銃やら刀やら剣、槍、ハンマーなど様々な武器が入っていた。 「日頃のストレス発散として家の物を破壊しても問題ありません。現実世界では何ともないのですから。それと私自身へ対してもです。どれだけ傷つけようか何をしようが、現実世界の私には一切関係の無い事。もし途中でお止めになりたければこの時計の針を零時までお進めください。では夢の世界をお楽しみいただければ幸いです」  俺は箱の中から拳銃を取り出しテレビに向け引き金を引いた。反動も音も(本物は知らないが)どこまでもリアル。  俺は手元の拳銃へ目を落とした後、女性へと目を向けた。相変わらずニッコリと笑みを浮かべている女性。そして俺は……。
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