終末時計

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「なぁなぁ、終末時計って知ってるか。」 「なにそれ、聞いたこともない。」 「なんか世界が終わって人類が滅亡するときに0時00分になる時計らしい。 」 「そんなん聞いたことなかったわ、じゃあ今日のうちに0時になったら二人とも死んでしまうってことなんかな。」 「いや、勝手に進むものじゃなくて人工的に考えられたものだから進むときもあるし逆に戻るときもあるらしい。今は全く動きがない状態なんよね。」 「へぇー、不思議な存在なんやね。ところで今何時なんだろ。」 「えーっと、23時58分や。」 「やば、あと二分じゃん、どうしよう家に帰ってどうにか問題を解決しないとダメや。」 「落ち着けって、これからも当分は進まないだろうと思うし、いったん焦るのやめようぜ。」 「落ち着いてられるわけないじゃん、じゃあどうしろっていうんよ、じゃあどうにかしてよ。」 「いや、それは話が違うやろ。解決とかじゃなくて、そもそも最近進んでないから。大丈夫だって話をしてるの。」 「はぁ、もうなんかめんどくさいわ。時計だけ気にしてるのバカバカしくなってきた。」 「お前が先に心配したんだろ!馬鹿みたいにビビりやがって。先に言っといてその反応はないわ。ふざけんな。」 怒りはそれだけで収まらず何かにエネルギーをぶつけ発散したくなった。 咄嗟にそこにあった相手の体を突き飛ばす。 体は見事に宙を舞い、完全に脱力した状態で上半身が揺さぶられる。 仰向けに倒れた先には表面がごつごつとした大きな石がある。 「まずい。」 そう思った時には遅かった。 二つの物質が惹かれあうように「ゴツン」という音を立ててぶつかり合う。 何が起きたのか分からなかった。否、分かりたくなかった。 赤く黒く滲みだした土をただ茫然と見るしかなかった。 不意に脳と体が共鳴し、互いに行動に移し急いで彼女のもとに走りだす。 血で染まった石から身を離し、とにかく早く止血しようとする。 しかしもう手遅れだった。彼女のぬくもりは時間とともに低くなる。 「あぁ…。」 ほとんど吐息だけになった声を吐きながら、男は絶望する。 受け入れ難い真実を脳が拒もうとするが、目の前の光景が脳の働きを上回りダイレクトに心に突き刺さってくる。その痛さと重さで涙が出てしまう。 「俺は人を殺したんだ。もう助けてくれる人は誰もいなくなってしまった。俺は自ら人類の命を絶ってしまったんだ。」 あらゆるマイナスの感情が溢れ出てくる。 「もう、、ダメだ。俺は生きられない。」 そう言い残すと男は底の見えない谷底へと自分の姿を投げ出した。 ちょうど終末時計が0時00分を指したところだった。
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