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センダンの木
作戦開始。
〈戦いとはいつも二手三手先を考えて行うものだ〉シャア・アズナブルだぜ。
ふぅっと息を吐く。行くぜ! シューズの底がジャと鳴る。探偵に向けて真っ直ぐ走る。風を切る音が耳を鳴らす。
僕を捕まえようとする顔に戸惑いが見える。え? ぶつかってくる気? ウソだろ?
腰が浮く。目が泳ぐ。チャーンス!
華麗なるステップでダッとコースを変えて一気に駆け抜ける。
「リョウスケが来た!」仲間たちが大喜びする声が聞こえる。みゆきちゃんが手を振っている。間違いなく僕に向けて。
走る走る。センダンの木の下でじっと僕を待っていた、みゆきちゃんの元へ。
みゆきちゃーん! 恥ずかしいから心で叫ぶ。いま行くぜ!
「どけどけどけー!」
最後の相手を抜き去る。みゆきちゃんが近づいてくる。ぐんぐん近づいてくる。マシュマロみたいに柔らかな表情を浮かべたみゆきちゃんに手が届く。もうすぐ届く。思い切りタッチする。
その手を離さず、はぁーと息を吐く。
「ありがとう、深谷くん」
「なんのなんの、南野陽子」
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