悪漢探偵

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悪漢探偵

「あっかんたんてい? なんすかそれ」一番年若い津村が、ジョッキを片手に首を傾げた。 「ほら、ふたつのグループに別れてやる、鬼ごっこみたいなやつだよ。おまえたちの世代はやらなかったか? 佐藤は知ってるよな」たこの唐揚げに箸を伸ばす。 「深谷(ふかや)さんそれ、ドロケイじゃないですか。泥棒と警察ふた組でやるやつ。あ、あのすいません、(なま)……深谷さんもまだ生でいいですか? じゃ、みっつください。あ、それと焼き鳥の盛り合わせを」  仕切り屋の佐藤が、お気に入りの女性店員が通りがかったときにすかさず注文した。とてもにこやかな顔で。 「あ、これじゃないですか……ケイドロもしくはドロケイは鬼ごっこの一種。名称は地方によってさまざま」スマホを見ている。 「津村、おまえすばやいな」 「わかんないことはグーグル先生っすよ。使ってるのはヤフーですけど。おお、悪漢探偵ってこんな字なんですね。よかったっすね深谷さん、ウソつきにならなくて」 「津村、なんだよその言い草」 fbee8aa0-0bcc-4c4a-adc7-30f7a217c8ca 「読みますよ。えーと、呼び方はケイドロ、カッコ警察と泥棒やドロケイの他にも、ドロジュン、カッコ泥棒と巡査」 「津村、カッコはいらないよ」佐藤がハエでも追うように手首を振った。 「ジュンドロ、ドロタン、泥棒と探偵のことらしいです。ヌスタン、盗っ人と探偵。ドロジ、泥棒じいさん。悪漢探偵、タンテイ、探偵ごっこ、助け鬼。捕まった人を助けるかららしいです。などさまざまである。  犯人役と捕まえる役に分けて、グループで遊ぶ。捕まえる役が泥棒役を追いかけて、牢屋または刑務所など呼び方はさまざまに、カッコ捕まえる。ですって。  しかし子どもの遊びに牢屋や刑務所って野蛮っすね。深谷さんは昭和生まれっすよね? 昭和ヤバイっすね」 「はい生みっつお待たせしました」 「ありがとう」目じりにしわを寄せた佐藤が片手をあげた。
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