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「本当すいませんでした、林君。かき氷機壊れちゃって」僕と雪絵さんは手を合せて謝る。
「今日はお疲れ様。かき氷機はしょうがないさ。その代わり僕も少しだけ参戦させてもらうよ」
どこで情報を得たのか林君はソフトボール部の飲み会にちゃっかり参加して来た。
「本当、かき氷助かりました。機械によってはあんなにキレイに仕上がるものなんですね」雪絵さんは壊れてしまった義理もあって林君にお酌をしながら言う。
「そうなんだよ!かき氷もスイーツも進化の一途何だ!僕は君だから貸して上げたんだよ、雪絵さん。君のように素敵なかき氷になるようにってね」とウインクする。
「何だあいつ?素敵なかき氷だってよ…!?」
「あいつんち凄い金持ちなんだかいつも
女の娘連れてるよな。でも何で今日はいないんだ?ショッキングピンクの女?」
「彼、雪絵さん狙い目なのか」
その周りにいる雪絵ファンはもどかしそうでこちらにまで歯ぎしりが聞こえてきそうだった。
「私みたいな、かき氷って」雪絵さんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。そんなこと言われたら僕だって照れるだろう。
「頑張った記念にこの指輪をあげるよ」
さすがに雪絵さんもこれには困ったようで僕の方をみて助けを求めているようにみえた。
「雪絵!今日は頑張ったみたいだな!お疲れー!」颯爽というより竜巻のような強引さでその間を割って入ってきた人、鳥谷先輩だ。
「こ、こんちは…どうも」林君は唐突に入ってきたゴツい感じの先輩に腰が引けたように思えた。
「何だ、お前もかき氷が好きなんだってな?でなければあんないいかき氷機、手に入れないよな?」
「は、はあ。そうですよね」
「『初雪シリーズ』最新アイススラッシャー。あれを持ってるやつはそうそういないんだよな!お前、一体どこで手に入れた?」
「そ、そうなんですか?あれはパパがプレゼントにくれたもので」
「パパが?パパはかき氷屋さんなのか?俺も今度友だち連れて行くぞ」
「そうじゃなくて、たまたまプレゼントされたんで」
鳥谷先輩の圧に推されて彼は声が小さくなっていく。
「初雪シリーズもいいけど俺は、個人的には池永鉄工のアイスクラッシャーも捨てがたいかな?、林君はどう思う?」
「どう思うといわれても…」
「鳥谷さんのかき氷講釈が始まれば雪絵さんは安泰だな」
雪絵ファンは胸をなでおろし、ようやく安心してビールを飲み始めた。
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