Sogni d’oro ~ 黄金色の甘い夢 ~

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 口は()いたきり塞がらない。「えっ」だか「あ」だか、言葉に満たない声がジルベールの喉を突きつづける。  つぶらな瞳がジルベールを見つめている。 「こっ蝙蝠……?!」  ようやくその正体が掴めた! 外套(マント)さながらの飛膜の翼をはためかせる。その激しさ・大ぶりな動きは只事ではないだろう。威嚇されている、間違いなく。おまけに『()()()()()()()()』?  そうはっきり聞こえた。おそらく空耳ではない。 「君も伯爵なの……?」  ジルベールが(ほう)けたままこう問うたのも、かの小説に登場する男が蝙蝠に変化するからだが、目の前の蝙蝠は「燃えるような赤い目」ではない。  夜に似合うとても綺麗な青い目をしている。 『僕は宮廷貴族だからなっ! でもお前には教えてやんないっ』  蝙蝠はいっそう翼をはためかせ、口を大きく(ひら)いた。わずかに覗く牙が鋭い。  ジルベールは珍妙なものを見た。  いきなり蝙蝠から体当たりを食らった。しかも喋る蝙蝠だ。あの夜ジルベールは確かに声を聞いた。しかしふしぎな夢だったのではないか? と未だに信じられずにいる。  結局その蝙蝠はそのまま飛び去っていってしまった。ジルベールには正体不明のままだ。  後になって聞いた話だが、アルファ・ビルヂングには蝙蝠の苦情がちらほらあったらしい。 ――だが、あれは()()()蝙蝠だったのだろうか?  そして今夜は一味も二味も違った。
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