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「ジルちゃん、今おいくつ?」
「二十一です」
ジルベールが答えると香川姉妹は「大きくなって〜」と言い、一段と笑顔になる。
「あらっ、それじゃあお母さんがあなたとお兄さんを産んだ年齢だわねぇ」
当時はまだ赤子だったジルベールは知る由もないが、彼の誕生時には『女優、スカーレット=ローズ・グロリオーサが第二子・第三子の双子を出産』と大々的に報道されたという。
また香川姉妹は、自分たちがジルベールの母親の映画を彼女の黎明期から観ていたのだと語った。
「ホント、よその子とゴーヤの成長は早いわね、お姉ちゃん」
妹の美加子がしみじみする。彼女らはジルベールのことを親戚の子のように可愛がってくれる。ジルベールが姉妹の206号室を訪ねると美味しい和食を振舞ってくれるか、必ずお土産に持たせてくれるのだ。
ジルベールは香川姉妹の手料理に舌鼓を打ちながら「この味、クラーレットも好きそうだな」などと考えた。
メモに書き起こしてもらったレシピの英訳は雄馬が引き受けてくれることになった。
この日は彰人も絶賛するお煮しめをおすそ分けしてくれた。
ジルベールも何かお返しがしたいと申し出ると二人はめっそうもない! と慌てたが、姉妹たっての希望で「実を言うと……一度でいいから抱擁してほしい」というお願いを笑って快諾した。
「やだぁ〜、鼻血が出ちゃう〜!」
「十和子ちゃん……! しっかり!!」
ジルベールが「大丈夫?」と問いかけると、なぜか美加子のほうが卒倒してしまった!
「えっ?! わっ、ミカコサン……?! えっ?」
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