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彼とは一度ゴミ捨て場で知り合ったが、その際に娘を「kawaii」と褒めてくれたので、ジルベールの中で柿沼静流の評価は跳ね上がっている。
「シズル〜!」
ジルベールが声高に呼びかけると彼はやや驚いてみせた。初めて顔を合わせたときも、こんなふうな反応だったか。
「おぉ……ジルベールなんちゃらさん、今日も背後の薔薇まで美しいですね」
無論ジルベールが実際に薔薇を背負っているわけではないが、人からはそう見えるらしい。
「シズル! カワイイ……!」
「いや、それだと俺が可愛いみたいなことになってますんで……」
この日のジルベールも「さあ、僕のkawaii愛娘を見て!」という気持ちでいっぱいだが、己の感情に任せると英語でまくし立ててしまうので、これが彼の精いっぱいだ。
友人たちに励まされ、膝には愛らしい猫を乗せてもらい、ジルベールは元気を取り戻していった。
程なくして美加子も目を覚まし、仕事帰りの大久保さんがコンビニで購入したおかゆのレトルトを持って登場した。
206号室が賑やかさを増す中で、床に気だるげに腰を下ろしていた芹がおもむろに口を開く。
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