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金髪碧眼の美青年は進んで俳優だとは明かさなかった。ジルベールは自らをひけらかす男ではない。
もっとも映画館や百貨店内の広告塔を務める香水売り場に行かない限りジルベールの顔をはっきりと認識する機会はないはずだから。初め、ジルベールは高を括っていた。
朝方の街へ颯爽と繰り出すと、えりあしの長い黄金の髪が歩調に合わせて優雅に流れる。この品格はジルベールが持って生まれたものかもしれないし、生き抜くすべとして身に着けたものかもしれない。
アルファビルヂングの前の道を行く最中、軽快なタイヤの音がした。エントランスのスロープをスケートボードに乗った少年が滑り下りてくる。
十代特有のあどけなさが残って見えるのは――自身がその年代を駆け抜けたからか――育ち盛りの年齢の割に小柄なようだ。
素人目でもなかなかの腕前だと分かる。
子役上がりのジルベールはスケートボードに触れたことすらない。万一怪我でも負えば事だと、幼い頃から遊びを制限されることが多かった。
羨ましいなと思った。
後で聞けば彼は芹と言い、管理人のヒロと親しいらしい。
五階建ての各階七部屋。特別大きな建物ではないがアルファビルヂングは盛況していて、部屋のほとんどが埋まっている。やはり角部屋を押さえられたのは幸運だった。
彼らは皆個性豊かで、興味深い住人ばかりだ。
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