Sogni d’oro ~ 黄金色の甘い夢 ~

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 念願の猫の魔術師と対面をはたしたジルベールは、ほくほくとした気持ちで借り部屋へ戻る。  三階に向けてエレベーターに乗り込むと、すでに先客がいた。一組の男女。大人の男と十代の少女だ。どんな関係だろうか? 少なくとも身内のようには見えない。  男性が不思議そうにジルベールを見るものだから、彼も「知り合いだっけ?」と内心で首を捻る。ごくごく普通の人で特に覚えはないはずだ。  今度はさりげなく目尻で見るような目付きで隣の少女を見遣る。黒髪の肩までのショートボブが「僕の娘と同じだな」と思ったくらいのもので、やはり彼女にも見覚えはない。  「3」のボタンが押されているところを見ると、同じ階の住人らしい。ジルベールは同じ階の知り合いがまだいないことに気がついた。  ジルベールに覚えはないが、二人にとってはそうではないようで――互いに確信は無いが――軽く会釈をして微笑みかけておいた。  しかしジルベールにも気がかりなことが一つある。彼がエレベーターに乗り込んだときの男性の反応だ。男性がやや鼻を効かせていた気がして……  もしかして匂ったのかな?  ジルベールはたばこもせず基本的に香水もつけないが、(広告塔を務めるブランドの仕事を覗く)301号室に戻る()(なか)、思わず匂いを確認するのだった。
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