16人が本棚に入れています
本棚に追加
跳ねるLIVE①
「Thank U!どうも、ありがとーー!We Love U!」
ドラムスの打音だけが、ライブハウス内に響く。和真が所属するバンド『Sea.dog』の用意した全曲とアンコール『ハッピーエンドでフラれたい。』が終わってもまだまだ、拍手が止まない。客は終わることを許さないでいた。
演奏が終わり暗転した。終わる事の無い手拍子。
舞台袖、上座からメンバーが一人、一人と舞台から消えていく。舞台傍で見ていた2番手に演奏するバンドのメンバーが舌打ちした。
「チッ!次がやりにくいぜ。」
初めてのライブを経験した和真に取っては最高の褒め言葉だった。しかし、ありがたい言葉を無視し、控え室へと縫うように歩いていく。
鳴り止まない。アンコールが鳴り止まない。
控え室に敷き詰められた畳に皆して座る。
手短に反省会が直ぐに始まった。結夏が淡々と話し始める。
「一曲目のSummer Cityはね。打ち込みの音とドラムの合わせ方が甘かったかな?音の入りが少しズレてた。お陰でボーカルの入りも微妙に遅れた。ボーカルの初仕事だから緊張すると思って、イントロ長めにしたのが良かったかな?やっぱり、初ボーカルは緊張したみたいね。」
「そりゃそうだ。カラオケで歌うのとは、訳が違ってたからね。200人の観客が凶器みたいだった。歓声が怒鳴り散らしてた。『俺たちを喜ばせろ!』ってね。プレッシャー、半端なかったよ。一番手だったしね。」
和真は興奮冷めやらぬ中、幾分、早口になっていた。
「傍から見てると、今日のボーカリストはシティライズされてて、オシャレ感満載だったけどなぁ・・・歌声、今まで聞いた、シティ・ポップのボーカリストの仲では最高だったよ。」
美由紀は眼をうるうるさせている。
「美由紀もいつになく、演奏に力が入ってた。毎回、今日みたいな、必死さがあるといいのにね。」
「これから、毎回、頑張ると思いますーーー。」
「あ、そうそう、バンド掛け持ちしてるメンバーは今日はありがとうございました。助かりました。ボーカルがお初だったのでやりにくかったと思うけど、これからも懲りずによろしく、お願いします。」
結夏は丁寧に頭を下げた。
サポートメンバーが控え室から去ると。ギターのヨシはライブを観に行くと、席を立って出掛けた。結夏、美由紀、和真が残った。
「ぶっちゃけるとさ。ベーシストとドラムスはオリジナルメンバー欲しいね。」
「結夏?」
「何?」
「私達のバンド、今日で解散するんじゃなかったけ?」
「何それ?する訳ないじゃない。」
「え?」
美由紀が和真に抱きついた。
最初のコメントを投稿しよう!